ワインに求めるもの

日本・東京に生まれ、2001年にバルセロナに移住。2002年から2年間サンサドルニ・ダノイア(バルセロナ市、カバ生産の中心地)でワイン醸造学を学び、現在はスペインのワインをインポーターの皆様に紹介する仕事をしている。

優れたマーケティングプランや経営理論があるわけでもなく、マスターソムリエといったタイトルもない。”心を動かされるワイン” を紹介させてもらっている。

「美味しい」という味やワインの個性の評価に加えて、ブドウやワインの生まれた場所・景色がイメージできるワインであることが大切だと常に感じている。つまり、品種や醸造方法、ワインのスタイルが、完成形であるワインと一直線上にあること。そして、それをきちんと証明できるような、醸造家の環境や醸造への考え方や姿勢があることも重要視している。例えば、巨大なトラクターで畑を掘り起こしたり、セラーを立てるために山を削るようなことは避けて、自然環境になるべくインパクトを加えない栽培方法を行うこと。また、天然酵母など、畑を取り巻く環境の中にあるもののみがワインの中にあることが理想だ。農薬(特に殺虫剤や除草剤)散布をやめることで土壌の汚染を防ぎ、また人体への影響も最少に抑えられる。

古い畑を大切にしている生産者にも強い魅力を感じる。
イベリア半島(スペイン、ポルトガル)には、今でも樹齢50-80年、中には120年を越えるような古い畑が大切に守られている。これらの畑は、利益や経費を度外視して家族に代々引き継がれてきた。樹齢80年以上の畑は、スペイン市民戦争直後の貧困や過疎を生き延びてきたスペイン農村部の歴史や人々の暮らしを見守ってきた。今、スペインのぶどう栽培家は、次世代の育成に苦心している。ぶどうの価格は低すぎるため、自分達の手でワイン造りをしない限り生活が成り立たなくなってきている。そのため、古い畑を抜いて小麦畑にし、政府からの援助金をもらって生活せざるを得なくなってきている。古い畑から収穫されたぶどうがA+ランクの評価を受け、正当な価格で取引されるように微力ながら協力したい。畑を取り巻く環境を今改善しなければ、古い畑のみならず栽培の伝統も途絶えてしまうだろう。開発ではなく、継続することの大切さを訴える人たちをサポートできたらと願っている。

そしてなによりも大切なのが、美味しいワインを多くの人たちに飲んでもらい、笑顔になってもらえたらいいと思う。

Rubus Viñas de Baguena

Ester Nin en Coma den Caçador 

Jose Crusat en Branco Lexitimo